浜松市楽器博物館 コレクションシリーズ30 ラ・カンパネラ 〜エラールピアノ、音の世界〜

CDラ・カンパネラフォルテピアノ:小倉貴久子

収録曲:
F.リスト
《愛の夢》ノットゥルノ第3番 S.541
《ラ・カンパネラ》パガニーニ大練習曲より S.141
F.ショパン

《レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ》(ノクターン)嬰ハ短調 遺作
ポロネーズ《英雄》変イ長調 作品53
E.サティー

《ジムノペディ》第1番
《ジュ・トゥ・ヴー》(おまえが欲しい)
C.ドビュッシー

《喜びの島》
M.ラヴェル

《亡き王女のためのパヴァーヌ》
組曲《クープランの墓》
前奏曲、フーガ、フォルラーヌ、リゴードン、メヌエット、トッカータ

使用フォルテピアノ:エラール パリ 1874年 突き上げ式 ダブル・エスケープメント 85鍵

録音:2010年4月20日〜22日 アクトシティ浜松音楽工房ホール
発売:2011年2月
企画・制作:浜松市楽器博物館
録音・製作:コジマ録音
解説:小倉貴久子

LMCD-1925 3,045円(税込価格)

このディスクは、レコード芸術「準特選盤」、また読売新聞「サウンズBOX」コーナーで推薦されました。

 バロック時代のチェンバロ全盛期を経て、18世紀には、作曲家や愛好家たちは、フォルテピアノという新しい時代の到来を予感させる楽器に関心が移っていきます。そして、19世紀は文化・芸術の中心にピアノ音楽が君臨する時代となるのです。
 19世紀末になると、古楽の復興とともにモダン・チェンバロが製作され始めます。20世紀になると、ピアノという楽器は大きく変化していき、現代のピアノは、17世紀から基本的に姿を変えていない弦楽器や管楽器(フルートをのぞく)から大きく離れ、巨大なオールマイティーな楽器へと姿を変えました。そして、作曲家とピアニストの分業時代に入ります。19世紀までは、作曲家は、兼ピアニストだったのです。ドビュッシーやラヴェルがパリ音楽院のピアノ科に馴染めず、作曲科に転科するエピソードはそれを象徴的に物語っているようです。
 このアルバムで演奏しているエラールのピアノは、エラールが1777年に工房を設立してから創業100年を迎えた頃の楽器です。エラール社は、楽器製作者たちがチェンバロを製作していた時代から、ピアノの興隆期〜全盛期を共に歩み、19世紀末にはモダン・チェンバロをも製作しています。数々の発明をして、ピアノという楽器を近代的な楽器へ導き、リストを始め、ヴィルトゥオーゾ・ピアニストたちを支援し、時代の先頭を歩いたエラール社でしたが、19世紀末のスタインウェイ社やチッカリング社のピアノの工業製品化に反対して、20世紀には姿を消してゆきます。この1874年のエラールのピアノには、そんな職人的な音色へのこだわりが感じられます。現代的なピアノに人々の関心が移ってきた時代、「管弦楽の音の魔術師」と呼ばれたラヴェルが、最も高く評価していたピアノ。それが、平行弦のエラールのピアノであったということは意義深いことだと感じます。19世紀のピアノには、それぞれのお国柄による価値観を背景にした強い個性が残されているのです。
 収録した作品は、19世紀フランスで活躍した作曲家たちによる、1830年から1917年までのものです。当時のフランスの音楽界の雰囲気を感じていただけたらと願っています。

小倉貴久子

・・・小倉貴久子が楽器の魅力を生かしつつ、リスト、ショパンとフランス近代の名品を巧みな表現で聴かせる。ことにラヴェルの「クープランの墓」の演奏は秀逸。(読売新聞2011年2月17日夕刊 「サウンズBOX」の評より)
・・・(曲目は)ごらんのとおり周知の名曲のオン・パレード。しかし、それなのに、CD全体は新鮮な輝きを帯び、瑞々しい樹液をたぎらせた若木のような感触すら伝える。その理由は言うまでもなく、一にエラールから放たれる音色、二に、ピアノに触発されてピアニストとしての美点を一杯に発揮した小倉貴久子の演奏にある。たとえば〈ラ・カンパネラ〉の高音部連打があたかも火打ち石のような響きを立てても、それが何とも言えず快楽を誘うのだ。《英雄ポロネーズ》にはモダン・ピアノでは感じ取れない柔らかなペーソスが宿るし、《クープランの墓》も、魅力的な響きにかけては他のどの盤にも劣るまい。ほか、すべてに魅力が宿る、といっても差し支えない。(レコード芸術2011年3月号、濱田滋郎氏の評より)

ご注文は「お申し込みコーナー」までどうぞ。

[サンプル]
M.ラヴェル:《クープランの墓》
〈リゴードン〉より

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