クララ&ロベルト・シューマン
愛、輝きと優しさ
クラヴィーア・アンサンブル◇グラーフのフォルテピアノとともに

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第1回「ショパン」 第2回「ベートーヴェン」


コンラート・グラーフのピアノを用いて
2008年2月23日アクトシティ浜松音楽工房ホール、
2008年3月2日第一生命ホール
で行われたコンサートです。

[静岡文化芸術大学の室内楽演奏会3]
監修:小岩 信治・平野 昭

小倉 貴久子(フォルテピアノ)
桐山 建志(ヴァイオリン)
藤村 政芳(ヴァイオリン)
長岡 聡季(ヴィオラ)
花崎 薫(チェロ)
笠原 勝二(コントラバス)

on period instruments

クララ・シューマン ピアノ協奏曲 イ短調 作品7 〈室内楽版〉
ロベルト・シューマン ピアノ五重奏曲 変ホ長調 作品44
ロベルト・シューマン 「謝肉祭」 作品9


【浜松公演】博物館レクチャーコンサート、静岡文化芸術大学文化芸術セミナー
2008年2月23日(土)
14:00開演(開場13:00, 13:15〜 小岩信治のプレトーク)
全席自由:一般3,000円、学生1,500円
アクトシティ浜松音楽工房ホール

主催:静岡文化芸術大学 文化・芸術研究センター、浜松市楽器博物館
後援:ドイツ連邦共和国大使館、静岡県教育委員会、中日新聞東海本社

【東京公演】TAN's Amici Concert
2008年3月2日(日)
14:00開演(開場13:00, 13:15〜 小岩信治のプレトーク)
指定席:一般4,000円、学生2,000円
第一生命ホール

主催:静岡文化芸術大学 文化・芸術研究センター、NPOトリトン・アーツ・ネットワーク/第一生命ホール
協力:浜松市楽器博物館
後援:ドイツ連邦共和国大使館、静岡県教育委員会

【使用楽器】
C.グラーフ作 Conrad Graf (Vienna, 1820?)
浜松市楽器博物館所蔵

【共演者のプロフィール】

Violin 桐山 建志 Takeshi Kiriyama

東京芸術大学大学院修了。フランクフルト音楽大学卒業。1998年、第12回古楽コンクール「山梨」第1位。1999年ブルージュ国際古楽コンクールソロ部門第1位。現在、「オーケストラ・シンポシオン」のコンサートマスター、「エルデーディ弦楽四重奏団」「ラ・フェート・ギャラント」「コンヴェルスム・ムジクム」のメンバー。フェリス女学院大学非常勤講師。

Violin 藤村 政芳 Masayoshi Fujimura

東京芸術大学卒業。新日本フィルハーモニー交響楽団にフォアシュピーラーとして入団。1991年にKISA弦楽四重奏団を結成し、1996年大阪国際室内楽コンクールに入選。現在、東京フィルハーモニー交響楽団の首席奏者。ソロ、室内楽、スタジオレコーディング等で活躍中。

Viola 長岡 聡季 Satoki Nagaoka

東京芸術大学室内楽科博士課程に在籍中。各地の音楽祭、オーケストラの客演首席奏者として活躍する他、オリジナル楽器奏者としても「バッハコレギウムジャパン」「オーケストラシンポシオン」等で活躍している。作・編曲、即興演奏なども手がける。

Violoncello 花崎 薫 kaoru Hanazaki

東京芸術大学及び西ベルリン芸術大学卒業。後にカールスルーエ音楽大学に学ぶ。第50回日本音楽コンクール チェロ部門第3位入賞。 現在、新日本フィルハーモニー交響楽団首席チェリスト、「エルデーディ弦楽四重奏団」のメンバー。東京芸術大学及び武蔵野音楽大学非常勤講師。

Contrabass 笠原 勝二 Shoji Kasahara

東京芸術大学卒業。現在、東京交響楽団首席奏者。室内楽、ソロ活動を積極的に行う一方、編曲、指揮を手掛ける。「オーケストラ・リベラ・クラシカ」他、ピリオド楽器によるコンサートに多数出演。コントラバス四重奏団「クワトロ・ポルテ」、弦楽合奏団「ヴィルトゥオーゾ横浜」のメンバー。東海大学教養学部非常勤講師。

ロマン派音楽の作曲家ロベルト・シューマンの創作は、とくにピアノという楽器を介して、妻クララと強く結びついていました。クララ・ヴィークの作曲家・ピアノ奏者としての卓越した才能を示す《ピアノ協奏曲》イ短調(1833-36年)は、のちのロベルトの名作《ピアノ協奏曲》イ短調に向かう二人の共同製作の重要なステップでした。ほぼ同じ時期にロベルトがまとめた《謝肉祭》(33-35年)は、本格的なピアノ・ソロ曲の作曲家としての彼の傑出した才能を知らしめた作品。二人は1840年に結婚し、それがロベルトの「歌の年」として、そして翌々年の「室内楽の年」として、創作にも豊かな実りをもたらしました。1842年のロベルトの《ピアノ五重奏曲》は室内楽史の一つの頂点であり、ピアノを通じて結ばれていた二人の輝かしい音楽世界を今日に伝えています。三たび浜松市楽器博物館の歴史的ピアノを使って、小倉貴久子ほかスペシャリストたちが揃ってお届けする演奏、今回もご期待下さい。
「静岡文化芸術大学の室内楽演奏会」監修:小岩信治・平野昭



東京公演ゲネプロの様子

TAN Community Paper
TANかわら版 vol.67 2008年2月1日発行に掲載されたインタビュー記事より

The Interview インタビュー]
小岩信治(静岡文化芸術大学准教授)さんが
小倉貴久子(フォルテピアノ奏者)さんにきく

19世紀のピアノを使って
シューマン夫妻がピアノに求めた
夢を表現したい。

小岩:フォルテピアノ奏者として大活躍の小倉さんですが、ふだんは現代のピアノは弾きますか。
小倉:よく弾きます。時間ができると弾くのはショパンのエチュードですね。
小岩:東京芸大ではピアノ科だったわけですしね。学生時代にはどんな曲を?
小倉:ストラヴィンスキーの《ピアノと木管・打楽器のための協奏曲》を弾く機会などもありましたが、やはりシューマンですね。シューマンは学生時代から惹かれていた作曲家です。だからこそ、初めてのリサイタルでも《謝肉祭》をとりあげました。
小岩:それは小倉さんの最近の演奏活動からはあまり想像がつきませんね。TANとの協同制作である「静岡文化芸術大学の室内楽演奏会」の最終回「クララ&ロベルト・シューマン 愛、輝きと優しさ」を準備してきましたが、小倉さんにとってシューマンがそれほど大切だということを実は今日まで知りませんでした。結果的に小倉さんの「心のふるさと」である作曲家を選ぶことになってよかったです。
小倉:確かに歴史的ピアノでの演奏をあまりしていませんが、それには楽器の問題も大きいです。シューマンのピアノ曲に合う楽器がなかなかないのです。今回このようなかたちで演奏できるのはほんとうにうれしいですね。
小岩:昨年の「ベートーヴェンのアンサンブル」ではアントン・ヴァルターの1810年ころのピアノでした。今回のコンラート・グラーフの楽器はそれよりも少なくとも10年以上あとの楽器ですね。どんな点で違いますか?
小倉:依然として現代のピアノとは異なる世界ですが、ヴァルターの硬質な響きに比べるとはるかに豊かでやわらかい響きです。ロマン派の香りがしますね。6オクターヴ半の楽器で、弦を打つ1つ1つのハンマーはさらに大きくなっています。グラーフのピアノのなかでも特別仕様なのか、白鍵に貝が貼られています。
小岩:弾きにくくないのですか?
小倉:自然の素材だからなのか、意外と指になじみます。
小岩:そのような楽器を使っての《謝肉祭》や《ピアノ五重奏曲》にはどのような魅力があるのでしょうか。
小倉:シューマンの場合、大ホールで効果を発揮するというより、ピアノのそばにいる大切な人1人に語りかけるというタイプの独奏曲が多いと思います。《謝肉祭》は外向きな要素もあり、華やかですし、必ずしもその典型ではありませんが、それでも彼の内面の変化がつぎつぎと現れます。マスに訴える音楽ではありません。歴史的な楽器は、そうした彼の音楽の特質を伝えるためにとても重要です。《ピアノ五重奏曲》は弦楽器との響きがとても楽しみですね。この時代のピアノと弦のバランスが、自然な響きとなって聞こえてくるはずです。弦楽器に対峙するためにピアノが全力でぶつかることもあるでしょう。現代のピアノなら室内楽で弦楽器を圧倒するパワーが潜在的にありますが、グラーフの場合はそのような余裕はなく、だからこそ生まれるような真剣勝負の局面があると思います。それは、第一生命ホールのような比較的小さな(といってもシューマンの時代のサロンと比べればずいぶん大きいですが)空間でこそお楽しみいただけるものでしょう。
小岩:そしてもう1つ、このシリーズで毎年室内楽編成で演奏されるピアノ協奏曲、今回はクララ・ヴィーク(シューマン)です。
小倉:クララはパリなどヨーロッパ各地に演奏旅行して、当時の多面的なピアノの世界をよく知っていたピアニストです。ただ、やがて彼女の夫となるロベルトはウィーン・タイプのピアノを好んでいた人ですし、彼女がロベルトの手を借りながら作ったこの作品が目指していたのはおそらく、ウィーンを中心とするピアノ文化で映える音楽だったのでしょう。今回の演奏会を通じて、シューマン夫妻がピアノに求めていたものを表現できたらと思っています。

[静岡文化芸術大学の室内楽演奏会 主催者のホームページ]

・静岡文化芸術大学
・浜松市楽器博物館
・トリトン・アーツ・ネットワーク/第一生命ホール

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